ワインの当たり年とは?チャートの見方とおすすめワインの紹介
ワインの用語で「当たり年」という言葉を耳にすることがあります。しかし、当たり年とはどのような年なのか、通常の年とは何が違うのかよくわからない方もいらっしゃるでしょう。
本記事では、ワインの当たり年の内容と調べ方を説明しています。当たり年のワインも紹介していますので、ぜひワイン選びの参考にご一読ください。
目次
ワインの当たり年とは?
ブドウが適切に熟成して収穫できた年を「ワインの当たり年」と呼びます。
ブドウは農産物のため、天候によってその年にできるブドウの品質や収穫量が左右されます。その土地で作られるブドウにとって、ベストの条件で収穫できた年が「当たり年」とされるのです。そのため、国や地方によって当たり年は異なります。
当たり年に造られたワインは「グレートヴィンテージ」、ブドウのできがそれほどよくない年に造られたワインは「オフヴィンテージ」と呼ばれて区別されます。
なお、ここ10年くらいは醸造技術が向上してきたため、比較的安定した品質のワインが毎年造られるようになりました。そのような状況でも、当たり年のブドウで造られたワインの品質はより高くなっており、希少価値の高いワインとして取り扱われます。
当たり年に造られたワインの特徴
当たり年に造られたワインは、例年に比べて長期熟成に耐えられる傾向となるのが大きな特徴です。
栽培条件のよい年に収穫されたブドウは、糖分やタンニンが多く濃厚な風味となります。そのような品質のブドウを使ってワインが造られるため、エキス分の多い濃厚なワインになる傾向が高くなります。
では「当たり年ではないオフヴィンテージのワインは品質が悪いのか」というと、そうではありません。オフヴィンテージのワインは早めに熟成する傾向となるため、飲み頃が早く訪れるメリットもあります。
なお、テーブルワインやカジュアルなタイプのワインでは、どのヴィンテージを選んでも大きな差はありません。当たり年の特徴は、ワインの品質が高いほど強く現れるようになります。
当たり年の調べ方
当たり年は、その年の出来栄えを一覧にしているヴィンテージチャートを見るとよいでしょう。
ヴィンテージチャートは、ワインを取り扱う業者が独自に作成しているものです。海外の「ワイン・スペクテイター」「ワイン・アドヴォケイト」がよく知られており、基準としてもよく利用されます。日本国内でも、独自でヴィンテージチャートを作成している業者があります。
当たり年の評価は判定基準や採点する人がそれぞれ違うため、チャートによって若干の差が見られるのは否めません。しかし、それぞれのチャートで大きく評価が異なることはまずないので、当たり年を調べたいときはどれか1つのチャートを調べると問題ないでしょう。
ヴィンテージチャートの見方
ヴィンテージチャートは、作成する業者によって100点満点や5段階など、点数のつけ方が異なっています。いずれのチャートも、点数の高い年はよいヴィンテージとされるのは共通です。また、ヴィンテージチャートは地方やワインの色でも細かく設定されています。
当たり年のワインは熟成に耐えられるとはいえ、20年以上前の古酒になるとワインの品質は保存状態に大きく左右されます。20年以上前のワインに関しては、ヴィンテージチャートよりも信頼の置けるショップを選ぶことが大切です。
ここでは、フランス・イタリア・アメリカのヴィンテージチャート(2000年以降)を紹介します。
フランス・ボルドー地方
ボルドーのヴィンテージチャートは、赤ワインとソーテルヌ・バルザックで造られる極甘口ワインにおいて重要視されます。辛口の白ワインもありますが、赤ワインや極甘口白ワインほど重要視されていません。
ボルドーでは地区別に細かく点数がつけられているチャートも見られ、他の地方で造られるワインよりもヴィンテージが重要視されている地方だといえるでしょう。
【2000年以降のヴィンテージチャート】
西暦 | ボルドー赤 | ボルドー白 (ソーテルヌ・バルザック) | ||
ワイン・スペクテイター | ワイン・アドヴォケイト | ワイン・スペクテイター | ワイン・アドヴォケイト | |
2020 | 92~93 | – | 89 | – |
2019 | 92~93 | – | 91 | – |
2018 | 94~96 | 94~97 | 89 | 90 |
2017 | 91~93 | 89~92 | 91 | 91 |
2016 | 94~97 | 95~97 | 90 | 92 |
2015 | 94~97 | 94~96 | 94 | 95 |
2014 | 91~93 | 90~94 | 96 | 92 |
2013 | 84~86 | 80~84 | 93 | 92 |
2012 | 88~90 | 89~94 | 86 | 88 |
2011 | 91 | 86~88 | 97 | 93 |
2010 | 98~99 | 94~99 | 93 | 90 |
2009 | 96~97 | 93~99 | 96 | 97 |
2008 | 87~88 | 90~96 | 90 | 89 |
2007 | 85~86 | 86~87 | 92 | 94 |
2006 | 89~90 | 87~90 | 91 | 88 |
2005 | 94~98 | 95~99 | 93 | 96 |
2004 | 88~89 | 87~88 | 89 | 87 |
2003 | 94~95 | 84~95 | 95 | 89 |
2002 | 86~87 | 85~88 | 87 | 85 |
2001 | 89~90 | 88~90 | 97 | 93 |
2000 | 93~95 | 94~96 | 87 | 88 |
赤ワインでは2018・2016・2010・2009・2005・2000の各ヴィンテージ、白ワイン(ソーテルヌ・バルザック)は2014・2011・2009・2001の各ヴィンテージが当たり年となります。
当たり年のワインは、価格も高くなる傾向が強いです。これはどの地方のワインにも当てはまります。10年以上の熟成に耐えられるものも多いですが、飲み頃となるときには市場に出ている数も減り、価格が高騰していることもあり得ます。欲しいと思ったものは、早めにキープして置くことも考えておくとよいでしょう。
フランス・ボルドー地方でおすすめの当たり年ワインは、下記となります。
シャトー・レオヴィル・ラス・カーズ 2005
シャトー・レオヴィル・ラス・カーズは、ボルドーのオー・メドック地区、サン・ジュリアン村にあります。
サン・ジュリアン村にある3つのレオヴィルの中で最も繊細なワインといわれており、メドック格付けは第二級ですが第一級シャトーにもひけを取らないほどの高品質を誇ります。
2005年と当たり年に造られたワインはたいへん評価が高く、ワイン・アドヴォケイトでは97点、ワイン・スペクテイターでは100点満点を取得しました。
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シャトー・ラ・ラギューヌ 2016
シャトー・ラ・ラギューヌはメドック格付け第三級のシャトーです。メドック格付けシャトーの中では最もボルドー市内に近く、地区の一番南に位置しています。
1950年代のシャトー・ラ・ラギューヌは畑も荒れ果て、荒廃しきっていました。1958年にジョルジュ・ブリュネ氏に買い取られてから奇跡的な復活を遂げ、現在ではオフヴィンテージでも安定したワインを造り出す実力派のシャトーとなっています。
2016年ヴィンテージは、ワイン・アドヴォケイトでは92点を獲得しました。オーク樽や黒系果実の豊かな果実味と複雑さを合わせ持つワインです。
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フランス・ブルゴーニュ地方
ブルゴーニュ地方では、新酒の出来栄えを見る「ボージョレ・ヌーヴォー」が知られています。なお、ブルゴーニュのヴィンテージチャートは、ボルドーほど細かく区分けされていません。
【2000年以降のヴィンテージチャート】
西暦 | ブルゴーニュ赤 | ブルゴーニュ白 | ||
ワイン・スペクテイター | ワイン・アドヴォケイト | ワイン・スペクテイター | ワイン・アドヴォケイト | |
2020 | 94~96 | – | 94 | – |
2019 | 95~97 | 94~98 | 93 | 93 |
2018 | 92~93 | 93~94 | 92 | 91 |
2017 | 93~94 | 92~95 | 94 | 97 |
2016 | 94~97 | 92~97 | 92 | 87 |
2015 | 95~98 | 90~98 | 95 | 94 |
2014 | 92~95 | 91~93 | 96 | 97 |
2013 | 89~92 | 86~92 | 90 | 90 |
2012 | 91~95 | 90~95 | 92 | 92 |
2011 | 90~91 | 90~91 | 92 | 91 |
2010 | 91~94 | 93~96 | 93 | 94 |
2009 | 93~95 | 95~97 | 89 | 91 |
2008 | 89~91 | 86~89 | 93 | 94 |
2007 | 88~90 | 85~91 | 92 | 91 |
2006 | 88~92 | 82~89 | 91 | 90 |
2005 | 95~98 | 95~98 | 93 | 88 |
2004 | 85~88 | 79~83 | 90 | 91 |
2003 | 90~93 | 87~93 | 87 | 84 |
2002 | 92~96 | 86~94 | 95 | 92 |
2001 | 84~89 | 75~91 | 89 | 86 |
2000 | 81~86 | 87~91 | 90 | 88 |
赤ワインは2019・2015(ボージョレ地区をのぞく)・2009・2005、白ワインは2017・2014の各ヴィンテージが当たり年になります。
フランス・ブルゴーニュ地方でおすすめの当たり年ワインは、下記のとおりです。
シャルル・ペール・エ・フィーユ・ジュヴレ・シャンベルタン 2019
シャルル・ペール・エ・フィーユは、オート・コート・ド・ボーヌの中心ナントに位置しています。
ブドウ畑は合計14haを所有しており、10haがオート・コート・ド・ボーヌ、4haがヴォルネイ、ポマール、ムルソー、ボーヌにあります。毎年そのヴィンテージで可能な最高の品質を目指し、土地の個性、区画の特徴を最大限に表現したワイン造りが特徴です。
2019年のジュヴレ・シャンベルタンは、濃い赤色でイチゴやリコリスのアロマを感じます。口に含むと力強く、リッチなボディを楽しめる味わいです。
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ボノー・デュ・マルトレイ・コルトン・シャルルマーニュ・グラン・クリュ2014
コルトン シャルルマーニュの畑を広く所有し、代名詞ともいわれる存在がボノー デュ・マルトレイです。
ボノー・デュ・マルトレイが所有するコルトン・シャルルマーニュの一部は、カール大帝が所有していた畑だといわれています。現在この畑には樹齢40~60年のブドウが植えられており、凝縮したミネラルを持ったワインが造られます。
ワインを最高の品質まで高めるため「1本のブドウ樹から約5房を手摘みで収穫」「ブドウは100%除梗」「ヴィンテージに関わらず年間生産量は180樽まで」といった徹底主義が、ボノー・デュ・マルトレイの特徴です。
凝縮した豊かな果実の風味に、伸びやかな酸と引き締まったミネラル感が一体となる、気品と複雑さを備えた逸品です。
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イタリア
イタリアでは、トスカーナとピエモンテの赤ワインでヴィンテージチャートが重視されます。
【2000年以降のヴィンテージチャート】
西暦 | ピエモンテ赤 | トスカーナ赤 (キャンティ、ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ) | ||
ワイン・スペクテイター | ワイン・アドヴォケイト | ワイン・スペクテイター | ワイン・アドヴォケイト | |
2020 | – | – | – | – |
2019 | – | – | 95 | 92 |
2018 | 93 | 92 | 93 | 89~93 |
2017 | 94 | 88~92 | 92~93 | 87~88 |
2016 | 98 | 95~97 | 97~99 | 97~98 |
2015 | 95 | 91~93 | 97 | 95~97 |
2014 | 92 | 87~89 | 88~89 | 87~88 |
2013 | 96 | 93~94 | 93~95 | 96~97 |
2012 | 94 | 88~89 | 89~96 | 88~89 |
2011 | 93 | 88~89 | 91~93 | 88~89 |
2010 | 97 | 95~98 | 92~98 | 96~98 |
2009 | 90 | 94~95 | 89 | 93~94 |
2008 | 94 | 90~91 | 91~94 | 90~93 |
2007 | 95 | 93~95 | 93~94 | 93~96 |
2006 | 95 | 95~97 | 93~95 | 96~97 |
2005 | 91 | 91~93 | 88~89 | 88~89 |
2004 | 94 | 93~95 | 89~97 | 95 |
2003 | 88 | 82~83 | 88~91 | 77~79 |
2002 | 72 | 70~73 | 78~79 | 70~72 |
2001 | 95 | 96 | 92~98 | 93~94 |
2000 | 93 | 94~95 | 88 | 90~93 |
地域によってややばらつきはありますが、2016・2010・2006の各ヴィンテージは、どちらの地区も当たり年となっています。
イタリア赤ワインでおすすめの当たり年ワインは、下記になります。
アゴスティーナ・ピエリ・ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ 2016
アゴスティーナ・ピエリは、当主の亡き後に醸造家のフランチェスコ・モナチ氏に委ねてスタートした新しいワイナリーです。
造られるワインは伝統的なモンタルチーノのワインを意識しつつも、素直なフルーツの味わいと香り、のど越しの良さを求めた現代的なワインに仕上がっています。
畑・気候・ブドウの成長を観察しつつ、コンピューターによる温度管理など現代的技術を合わせた生産方法を取り、抜群の安定感とバランスが実現していることも、彼らのワインの特徴でもあります。
当たり年である2016年のこのワインは、力強い印象を持ちつつも喉ごしよく滑らかさも感じる力作です。
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マリオ・マレンゴ・バローロ 2016
マリオ・マレンゴは、 1899 年からボトリングを開始しました。所有畑はすべてあわせて3.5haほどで、2001年にマルコ氏が後を継ぐと、一気に評価を上げていきました。
所有するすべての畑はラ・モッラに位置しており、畑名の入っていないバローロでさえもたいへん優れた区画にあってクオリティーも高くなっています。畑では硫黄と銅以外は使用せず、殺虫剤、除草剤は一切使用していません。
このバローロはラ・モッラの畑(ボイロ、セッラデナーリ、ロンカリエ、フォッサーティ)のブレンドとなっており、ブルゴーニュワインをイメージさせるような滑らかなタンニンと果実味が特徴です。
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アメリカ
アメリカ産ワインでヴィンテージチャートが重視されるのは、カリフォルニアの赤ワインです。
【2000年以降のヴィンテージチャート】
西暦 | カリフォルニア赤 (カベルネ・ソーヴィニヨン) | |
ワイン・スペクテイター | ワイン・アドヴォケイト | |
2020 | – | – |
2019 | 97 | – |
2018 | 99 | 96 |
2017 | 92 | 86 |
2016 | 98 | 98 |
2015 | 94 | 97 |
2014 | 95 | 93 |
2013 | 97 | 98 |
2012 | 96 | 96 |
2011 | 86 | 82 |
2010 | 96 | 95 |
2009 | 96 | 94 |
2008 | 96 | 94 |
2007 | 97 | 96 |
2006 | 95 | 91 |
2005 | 92 | 95 |
2004 | 95 | 91 |
2003 | 85 | 92 |
2002 | 93 | 95 |
2001 | 93 | 96 |
2000 | 85 | 78 |
カベルネ・ソーヴィニヨンのチャートを見ると、点数が軒並み90点以上となっています。中でも2018・2016・2013・2012・2010・2007の各ヴィンテージは高得点です。
白ワインにもヴィンテージチャートはありますが、例年安定して高い数値となっているので、どのヴィンテージを選んでもそれほど差はありません。
カリフォルニアワインでおすすめの当たり年ワインは、次のとおりです。
オーパス・ワン 2012
ボルドー・メドック格付け第一級の「シャトー・ムートン・ロートシルト」と、カリフォルニアワイン界の重鎮「ロバート・モンダヴィ」が手を組んで造った夢のワインが、オーパス・ワンです。
アメリカ初のウルトラプレミアムワインとしても知られ、「最高級カリフォルニアワイン」として圧倒的な存在感を誇るオーパス・ワンは、ワイン愛好家の垂涎の的となっています。
グレートヴィンテージの2012年産は、ジェームス・サックリング氏97点、ヴィノス96点、ワイン ・スペクテイター94点など、世界中のワイン評論家から高評価を得ています。
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クロ・デュ・ヴァル・エステート・ナパヴァレー・ヒロンデル・ヴィンヤード・カベルネ・ソーヴィニヨン 2016
1972年、実業家のジョン・ゴレ氏と、ボルドー出身の醸造家ベルナール・ポーテ氏が「世界最高のワイン」を造るために開業したワイナリーです。
カリフォルニアワインの評価がまだ低かった頃にボルドー第一級シャトーにテイスティングで勝利し、一気に知名度を上げました。
このワインは、ヒロンデール・ヴィンヤードの4つの区画で育ったカベルネ・ソーヴィニヨンのみを使って造られています。新樽比率100%のフレンチオークで熟成させており、濃厚な紫色の果実のアロマと、ラズベリージャムやトースト、エスプレッソなどが感じられる味わいです。
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まとめ
ワインの原料であるブドウは農産物のため、その年の天候によって品質が大きく左右されます。ブドウの品質が抜群によい年を当たり年と呼び、造られるワインの品質も高くなる傾向です。
当たり年を調べるには、ワインを取り扱う業者が作成するヴィンテージチャートを利用するとよいでしょう。業者によって多少の差はありますが、おおむね近い評価となっています。
とはいえ、ワインやワイナリーによって醸造や保管状態に違いがあるため、ヴィンテージチャートを過信しすぎるのも問題です。あくまでワイン選びに使うツールの1つとして使うのをおすすめします。
※この記事は2023年4月現在の情報を基に作成しています。
今後変更されることもありますので、ご留意ください。