フルボディの赤ワインとは?特徴とおいしい飲み方・おすすめワインを紹介
赤ワインを選ぶとき「フルボディ」「ライトボディ」といった言葉を耳にした経験がある人も多いのではないでしょうか。
ワインのボディは濃厚さを表す基準であり、フルボディは味わいも香りも濃厚なものを指します。
本記事では、フルボディワインの特徴と選び方、おいしい飲み方を解説しています。おすすめのワインも紹介していますので、ぜひワイン選びの参考にしてください。
目次
フルボディの赤ワインとは?
ワインの味わいや香りを表す際に、よく「ボディ」という表現が使われます。中でも、濃厚でコクのある力強い味わいを持ち、色合いの濃いワインを「フルボディ」と呼びます。
フルボディとは対照的に、色合いが薄く軽くて飲みやすいワインは「ライトボディ」です。また、フルボディとライトボディの中間的なものは「ミディアムボディ」とされます。
ワインのボディは、数値や基準が明確に決められているものではありません。相対的かつ感覚的なものであり、判断基準は人それぞれであるため、ワインを選ぶ際にある程度の目安をつけるため使われることが多くなっています。
フルボディ赤ワインの特徴
フルボディの赤ワインの特徴として、濃い色合いと力強い味わいがあげられます。フルボディのワインとその他のワインを見分けるには、次の点をみればある程度判断ができます。
- アルコール度数が高い
- タンニン量の多いブドウ品種が使われる
- 熟成期間が長い
ただし、これらの項目に当てはまっていても、フルボディのワインになるとは限りません。ワインのボディはすべてのバランスが重要となるため、これらはあくまで一つの目安として考えるとよいでしょう。
アルコール度数が高い
ワインのボディを決める要素として、アルコール度数の高さがあげられます
フルボディのワインはエキス分が高く、発酵期間が長くなる傾向です。赤ワインの度数は一般的に11~15%程度となり、フルボディは13%以上となるものが大多数です。アルコール度数の高さはワインのコクや飲みごたえに影響するため、度数の高いものはしっかりとした味わいを持つものが多くなります。
なお、アルコール度数の低いものでもフルボディのワインは存在します。度数の高さは、あくまでフルボディを見分ける要素の一つとしておくとよいでしょう。
タンニン量の多いブドウ品種が使われる
タンニンとは赤ワインに含まれるポリフェノールの一種で、ワインの色や渋みに影響します。タンニンの量が多いと濃厚な色合いで強い渋みを持つワインとなり、飲みごたえのあるどっしりした味わいとなります。
タンニンの量は原料のブドウによる部分が大きく、タンニン分の多いブドウからはフルボディのワインが多く造られる傾向です。
フルボディの赤ワインに使われるブドウ品種については、次項で説明します。
熟成期間が長い
熟成期間の長さも、ボディに影響を与えます。
醸造された赤ワインは、樽やタンクで熟成されます。木樽で長期間熟成されたワインは樽の成分がワインに乗り、香りや味わいが深くなる傾向がとくに強いです。
また、酸とタンニンが強くアルコール度数の高いワインは、瓶詰めされてからも長期の熟成に耐えられます。熟成によってタンニン分がまろやかになり、比較的飲みやすいワインに変化します。熟成期間はワインによってさまざまですが、たとえばボルドーの格付けワインであれば、10年以上は十分熟成に耐えられるでしょう。
なお、タンニン分の少ないミディアムボディやライトボディのワインは、ブルゴーニュの高級ワイン(ロマネ・コンティなど)など一部の例外をのぞいて、熟成させるには不向きです。
フルボディ赤ワインの選び方
フルボディの赤ワインを選ぶには、次にあげる3つの方法が一般的です。
- 産地で選ぶ
- ブドウ品種で選ぶ
- 料理に合わせて選ぶ
それぞれについて、詳しく説明します。
産地で選ぶ
フルボディの赤ワインは、世界各国で造られています。ワイン選びに迷った場合、自分の知っているワインの有名な国や地域のものを選ぶとよいでしょう。さまざまな国や地域のワインを飲み比べて、それぞれの特徴を比べてみるのも面白いものです。
【フルボディ赤ワインを造っている代表的な国と地域】
- フランス:ボルドー地方はカベルネ・ソーヴィニヨンを主体としたフルボディ赤ワインの名産地。コート・デュ・ローヌ地方ではシラーを使った濃厚なワインも生産される。
- イタリア:ワイン生産量世界第1位。トスカーナ州では渋みの抑えられたフルボディ赤ワインが造られる。
- スペイン:酸味とタンニン分が強いテンプラリーニョ種を使った赤ワインがよく知られる。
- アメリカ:カリフォルニア州ではフランスを手本とした濃厚なフルボディの赤ワインが造られている。
- チリ:比較的安価でコストパフォーマンスの高いフルボディ赤ワインを楽しめる
ブドウ品種で選ぶ
ワインに使われるブドウ品種で選んでみるものよいでしょう。品種によって味わいの特徴が異なる上、同じブドウでも産地によって微妙な違いがあるのも面白いところです。
【フルボディ赤ワインが造られる代表的なブドウ品種】
- カベルネ・ソーヴィニヨン:フランス・ボルドー原産で、世界中で栽培されている。濃い色合いと強い渋みが特徴。
- メルロー:フランス・ボルドー原産。色は濃厚だがタンニンはやや控えめで柔らかい味わい。
- シラー(シラーズ):フランス原産だがオーストラリアで多く栽培される。スパイシーで華やかな香りを持つ。
- ネッビオーロ:イタリア原産。色合いは明るめだが強いタンニンを持つ。
- テンプラリーニョ:スペインで栽培される品種。酸とタンニンのバランスがよい。
料理に合わせて選ぶ
料理に合わせて選ぶのも、ワイン選びの面白さの一つといえるでしょう。
ワインと料理の相性は、「マリアージュ(フランス語で結婚を意味する)」と呼ばれます。たとえば渋みや酸味が強く飲みにくく感じるワインでも、料理と合わせることで渋みや酸味が和らぎ、飲みやすく変化します。
フルボディの赤ワインは味と香りが濃厚なので、繊細な味わいの料理よりも肉や熟成チーズなど、濃厚な料理に合わせるとおいしくいただけるでしょう。
合わせる料理に迷った場合は、色合いの近い料理やワイン産地の近くの名物料理などと合わせるのがおすすめです。
フルボディ赤ワインの飲み方
フルボディの赤ワインは酸味も渋みも強いため、飲みにくさを感じられることがしばしばあります。そのような際は、抜栓してから一工夫するとさらにおいしく飲めるようになります。
抜栓してすぐのワインは香りもあまり出ておらず、酸味や渋みの角が立った味わいです。そのようなときは抜栓してすぐ飲まず、しばらく空気に触れさせておくとよいでしょう。空気に触れさせることでタンニン分が変化してまろやかになり、香りも徐々に開いてきます。
実際に飲むときには、デカンタージュ(ボトルからデカンタにワインを移し替える)させてから、大きめのグラスで飲むのがおすすめです。グラスに注いでもまだ渋みを強く感じる場合、スワリング(グラスを回してワインを空気に触れさせること)すると飲みやすくなります。
なお、フルボディの赤ワインはつめたく冷やすと、渋みやえぐみが強調されて飲みにくくなります。冷えている場合は早めに室温に戻して(16~18度)飲むとよいでしょう。
世界各国のおすすめフルボディ赤ワイン8選
ここで、世界各国で生産されているおすすめのフルボディ赤ワインを8種類紹介します。産地やブドウ品種なども記載していますので、ぜひワイン選びの参考にしてみてください。
ヴィノジア ネロモーラ 2018
おすすめポイント |
・生産者は南イタリアワインの地位を確立したカンパーニャの先駆者 ・イタリアの土着品種「アリアニコ」100%で濃厚 |
ヴィノジアは、南イタリアワインの先駆的存在「フェウディ・ディ・サングレゴリオ」の設立者が、2003年に独立して設立しました。
ミネラル豊富な古い火山性土壌の畑では「ファランギーナ」「グレコ」「フィアーノ」「アリアニコ」といった、土着ブドウのみが栽培されています。この地で受け継がれてきた土着ブドウから、頂点のワインを生み出そうという意気込みを持ったワイン造りがなされています。
「ネロモーラ」とは、漆黒の果実という意味です。アリアニコ100%で造られたワインは黒系果実がたっぷり詰まった味わいで、豊かなタンニンとクリアな酸に支えられた超濃厚でボリューミーな赤ワインとなっています。
詳細情報
生産者 | ヴィノジア |
生産地 | イタリア・カンパーニャ州 イルビニア |
生産年 | 2018年 |
タイプ | 赤ワイン フルボディ |
原材料 | アリアニコ |
フアン ヒル ブルー ラベル (ディエシオチョ メセス)2020
おすすめポイント |
・樹齢55年以上の古樹モナストレルを使用 ・評論家から「一流ボルドーにひけを取らない」と絶賛 |
フアン・ヒルは、1916年に設立されたフミーリャを代表するボデガ(スペイン語でワイナリーの意味)です。
畑には樹齢40年を超える土地固有種のモナストレルに加え、若樹では「シラー」「カベルネ・ソーヴィニヨン」「シラー」などフランス系品種も栽培されます。ボデガの4代目ミゲル・ヒルは、フミーリャの伝統を守る昔ながらのワインメーカーである一方、現代スペインワインの立役者という面を持ち、ワイン評論家からも絶賛されています。
ブルー・ラベルは、樹齢55年以上の古樹のモナストレルから生まれるワインです。収量を抑えた3種のブドウをブレンドすることにより生まれた、とびきりの凝縮感と複雑さが楽しめるフルボディ赤ワインです。
詳細情報
生産者 | フアン・ヒル |
生産地 | スペイン・ムルシア州 フミーリャ |
生産年 | 2020年 |
タイプ | 赤ワイン フルボディ |
原材料 | モナストレル、カベルネ・ソーヴィニヨン、シラー |
ヘッド ワインズ ザ ブロンド 2018
おすすめポイント |
・生産者は南オーストラリアで新進気鋭の醸造家 ・決まったレシピが存在せず毎回違うアプローチで醸造 |
南オーストラリアの新進醸造家アレックス ・ヘッドによって、2008年に初リリースされたのが「HEAD」ブランドのワインです。
自分の畑を持たないヘッドは、有機栽培でサステナブル農法を実践する生産者から供給される低収量のブドウを使い、品種の個性とテロワールを反映したバランスのよいワインを生産しています。造られるワインは畑やブレンド、ヴィンテージごとに技術やプロセスが異なるため、決まったレシピは存在していません。
このワインは、オーストラリアを代表する品種シラーズが100%使用されています。プラムやブラックベリー、エスプレッソやダークチョコレートなどの香りと、果実の凝縮感とスパイスを感じる味わいのワインです。
詳細情報
生産者 | ヘッド・ワインズ |
生産地 | オーストラリア・南オーストラリア バロッサ |
生産年 | 2018年 |
タイプ | 赤ワイン フルボディ |
原材料 | シラーズ |
フラテッリ アレッサンドリア バローロ ヴェルドゥーノ 2018
おすすめポイント |
・ピエモンテのスター生産者が造るバローロ ・畑から製造、管理まで家族で管理・経営 |
バローロ最北端の村ヴェルドゥーノにワイナリーを構えるのが、フラテッリ・アレッサンドリアです。ワイナリーの起源は1800年代初頭で、1843年にベストワイナリー・オブ・ザ・イヤーの称号を得たという逸話からも、歴史の長さと高い品質をうかがい知れるでしょう。
所有畑は12ヘクタールに及び、サステナブル農法を取り入れています。「偉大なワインは偉大な畑から」という信念から、各畑からワイン造りまで、すべて家族で管理・運営することを心掛けています。
使われるネッビオーロは、標高や向きの異なる複数の畑で収穫されたもののブレンドです。バラやラベンダーにワイルドチェリー、スモークやメントールなどが混ざる気品あふれる香りで、バイオレットとバラのニュアンスが最初から最後まで続いていきます。
詳細情報
生産者 | フラテッリ・アレッサンドリア |
生産地 | イタリア・ピエモンテ州 ヴェルドゥーノ |
生産年 | 2018年 |
タイプ | 赤ワイン フルボディ |
原材料 | ネッビオーロ |
マリリン ワインズ マリリン メルロー 2020
おすすめポイント |
・往年の大女優マリリン・モンローの名を冠した赤ワイン ・味わいの余韻が長く続くバランスの良さが魅力 |
ボブ・ホルダーとドナ・ホルダーの夫妻は、ワインに魅せられてナパ・ヴァレーに移住し、1980年にワインを造り始めました。1983年にメルローでワインを造った際、そのワインを「マリリンメルロー」と名付けるアイデアが生まれます。
そのアイデアは実現され、マリリン・モンローの写真の使用権を契約し、1985年マリリンメルローは一般に販売されることとなりました。一般販売されてからは、コレクターアイテムとしても人気を集めています。
名前の珍しさが先行していますが、ワインは非常にしっかりと造られています。黒系果実とトーストの香りが調和し、味わいの余韻が長く続く非常にバランスの良い仕上がりです。
詳細情報
生産者 | マリリン・ワインズ |
生産地 | アメリカ・カリフォルニア州 ナパ・ヴァレー |
生産年 | 2020年 |
タイプ | 赤ワイン フルボディ |
原材料 | メルロー、カベルネ・ソーヴィニヨン |
シャトー オー バタイィ 2016
おすすめポイント |
・ボルドー・メドックの格付けでは第5級 ・生産量が少なく希少 |
シャトー オー バタイィは、フランス・ボルドー地方ポイヤック村にある、メドック格付け第5級のシャトーです。
1930年代よりボリー家の所有でしたが、2017年にシャトー ランシュ バージュのオーナー、カーズ・ファミリーの所有となっています。
生産量の少なさからか、あまり知名度は高くありません。しかし、ポイヤックの中でもとくに柔らかくエレガンスの際立つスタイルで、多くのファンを持つ銘柄です。ワインは若いうちからでも楽しめますし、じっくり熟成させると素晴らしい変化を遂げることでも定評があります。
詳細情報
生産者 | シャトー・オー・バタイィ |
生産地 | フランス・ボルドー地方 ポイヤック |
生産年 | 2016年 |
タイプ | 赤ワイン フルボディ |
原材料 | カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー |
オーパス ワン オーヴァチュア NV
おすすめポイント |
・アメリカ初のプレミアムワイン、オーパス・ワンのセカンドワイン ・ニューワールドとオールドワールドが融合するワイナリー |
1979年、カリフォルニアのロバート・モンダヴィと、ヨーロッパのロートシルト(ロスチャイルド)家がパートナーを組み、オーパス ワンを創立しました。
造られるワインはアメリカ初のプレミアムワインとして取り扱われ、現在も高額で遺棄されています。
オーヴァチュアはオーパス・ワンのセカンドワインといった扱いで、ヴィンテージの枠を越えて醸造されたものです。長期に渡る樽熟成と複数ヴィンテージをブレンドすることで、味わい深く上品なワインに仕上がっています。豊かな果実のアロマとソフトでしなやかな味わいで、若くても非常に飲みやすいワインです。
詳細情報
生産者 | オーパス・ワン |
生産地 | アメリカ・カリフォルニア州 ナパ・ヴァレー |
生産年 | ノンヴィンテージ(リリースは2022年) |
タイプ | 赤ワイン フルボディ |
原材料 | カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、カベルネ・フラン、プティ・ヴェルド |
シャトー ラトゥール レ フォール ド ラトゥール 2016
おすすめポイント |
・メドック格付け第1級(5大シャトー)のセカンドワイン ・並みの格付けシャトーを遥かに凌ぐクオリティを誇る |
5大シャトーの中でも常に最高の品質と評価されるシャトー・ラトゥールは、14世紀頃にはワインが醸造されていた記録が残っています。18世紀末頃には、イギリスで他のワインの20倍で取引されていたと言われるほどの人気を誇っていました。
ラトゥールの品質を作っているのは「細部まで、やるべきことをきっちりと行う」につきます。近年では有機栽培にも取り組むなど、細部に至るまで完璧を追い求めたシャトーです。
シャトー・ラトゥールのセカンドワインであるこのワインは、濃い深紅の色合いで香りはピュア、熟した赤系・黒系果実の風味、ココア、タバコ、シトラスの皮のようなニュアンスが感じられます。口に含むと瑞々しく力強いアタックで、伸びが良く、余韻は非常に長いワインです。
詳細情報
生産者 | シャトー・ラトゥール |
生産地 | フランス・ボルドー地方 ポイヤック |
生産年 | 2016年 |
タイプ | 赤ワイン フルボディ |
原材料 | カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー |
まとめ
フルボディの赤ワインは、渋みの強さや味わいの濃厚さから、ワインを飲み慣れない方には飲みにくく感じられるものです。しかし、しばらく空気に触れさせて料理と合わせて飲むことで、飲みやすく変化します。
また、一口にフルボディの赤ワインといっても、産地やブドウ品種によっても特徴が異なります。本記事におすすめのワインをピックアップしていますので、ワイン選びの手助けにしていただき、自分の口に合うワインを見つけてみてください。
※この記事は2023年7月現在の情報を基に作成しています。
今後変更されることもありますので、ご留意ください。