トルクとは?適切なトルク管理や過剰な締め付けによるリスクを紹介!

日常的にタイヤの点検をしている人や、タイヤ交換を自分でしている人の中で、「トルク」といった言葉を見たり、聞いたりしたことがある人もいるでしょう。ただ、トルクとは具体的にどういったものかわからない人も多いのではないでしょうか。
そこで、今回はトルクとはどういったものなのかに加え、トルクを管理する方法や適正トルクではないときのリスクについて解説します。さらに、DIYでトルク管理するときの注意点についても併せて紹介するので、ぜひ参考にしてください。
目次
トルクとは?
「トルク」とは固定された回転軸に対して、ある物体を回転するときに働く力のことを指します。ホイールの締付作業のみならず、車の運動性能を表すときにも使用する言葉です。そのほか、ネジやボルトを回すときにも使用します。
もともとトルクの単位は「kgf・m」が使われていましたが、ISO国際規格である「新計量法」が1993年に施行されて以降、「N・m」(ニュートンメートル)という単位への移行が義務付けられました。
トルク値を表すときは「〇〇N・m」の単位で表示され、数字が大きくなるほど強い力となります。
車のタイヤ交換をおこなうときは、規定の締付トルクに注意する必要があります。各自動車メーカーや車種ごとに規定トルクが設定されており、規定のトルクで締め付けなければなりません。
国産車、輸入車問わず、どの車種にも規定トルクが設定されていて、専用工具を使って規定トルクでボルトやナットを締め付けています。
規定トルクはどうやって確認する?
メーカーや車種問わず、すべての車に規定の締付トルクが設定されています。適正締付トルクはメーカーや車種によって異なり、定められたトルクで締め付けをおこなう必要があります。
しかし、どうやって規定トルクを確認すればいいかわからない人も多いでしょう。ここでは、規定トルクを確認する方法について詳しく見ていきましょう。
車両の取扱説明書で確認する
新車を購入したときにディーラーでもらえる車両取扱説明書に規定トルクが記載されています。取扱説明書のタイヤ交換や緊急時の対処法の項目に、規定トルクが記載されていることが一般的です。
なお、新車購入時に車両取扱説明書をもらえなかった場合や、中古車を購入してもともと取扱説明書がなかった場合であっても、一部のメーカーや車種の場合、インターネットで取扱説明書を閲覧できることがあります。
過去に販売されていた車両の取扱説明書も閲覧でき、そこに規定トルクが書かれているケースもあります。
ディーラーに確認する
車両取扱説明書がない場合や、説明書があるものの規定トルクの記載がない場合は車を購入したディーラーに連絡して教えてもらいましょう。ディーラーでは過去の車両購入履歴を保管しており、整備歴などもすべてデータで残っています。
ディーラーの担当者に連絡すれば、今乗っている車の適正締付トルクを教えてもらうことができるでしょう。ただ、ディーラー以外で車を購入している場合は、教えてもらえない可能性があります。
トルクレンチの取扱説明書を確認する
タイヤを交換するときはトルクレンチという特殊な工具を使用します。トルクレンチは、どの程度の力(トルク)で締め付けているかを確認するための工具であり、適切なトルクでナットやボルトを締め付けるために使用します。あらかじめ規定の締付トルクを設定しておくことで、それ以上の力が加わらない仕組みです。
タイヤ交換で使用できるトルクレンチの場合、取扱説明書に各自動車メーカーの規定トルクが記載されていることがあります。
ただし、トルクレンチの種類によってはボルト径をもとに算出された推奨値を記載している場合もあり、車両別の適正トルクと異なる可能性もあります。そのため、トルクレンチの取扱説明書でトルクを確認するときは、あくまでも参考程度に留めておいたほうがいいでしょう。
タイヤのトルクを管理する方法

トルクの管理は、ディーラーやカー用品店に依頼すればしっかりと対応してくれます。しかし中には自分で管理したいという人もいるかもしれません。
トルクレンチという特殊な工具を使って、適正締付トルクを管理できます。トルクレンチの設定を規定トルクに合わせて、ホイールナットに差し込んで回します。あらかじめ設定した規定トルクに達すると、「カチッ」という音が鳴り、それ以上トルクがかからないような仕組みです。
「カチッ」という音が鳴った後に、何度もトルクレンチを使って締め付けると、徐々にナットが回転してしまい、あらかじめ設定した規定トルクをオーバーします。そのため、トルクレンチを使用するときは、「カチッ」という音が一回鳴ったのを確認すれば問題ありません。
なお、トルクレンチは使用頻度が高くなると精度が狂う可能性があります。そのため、最低でも1年に1回以上の頻度でトルクレンチの精度をチェックすることが大切です。
また、トルクレンチのメーカーや種類によって、強度や精度に違いがあることも留意しておきましょう。
タイヤのトルクが適切でない場合のリスク

ここでは、トルクが適切ではない場合のリスクとして、規定トルクよりも弱い場合と規定トルクよりも強い場合の2つに分けて解説していきます。
規定トルクよりも弱い場合
締付トルクが規定トルクよりも弱い場合は、走行中の振動や負荷によって、車両からタイヤが外れてしまう可能性があります。また、タイヤが外れなかったとしても、走行中にタイヤがブレてしまい、安全に走行できなくなってしまうケースも少なくありません。
重大な事故につながることがあるので、規定トルクを守りましょう。
規定トルクよりも強い場合
規定トルクよりも弱くなるのを心配して、つい締めすぎてしまうといったケースもあるかもしれません。しかし、規定トルクよりも強く締めるけることで、ホイールが破損してしまう恐れがあります。
さらに、ホイールだけでなく、ハブボルトが破損する可能性があり、タイヤが外れてしまうこともあるので注意が必要です。なお、ハブボルトが破損してしまうと、交換・修理が必要となります。
ハブボルトの修理費用については、車種や状態などによって異なるものの、高額になるケースも少なくありません。
DIYでトルク管理するときの注意点
ここでは、DIYでトルク管理するときの2つの注意点について解説します。
規定トルクを守る
DIYでトルク管理するときは、必ず規定トルクを守りましょう。先述の通り、規定トルクよりも弱くても、強くてもトラブルが発生してしまいます。
締め付け不足でナットが緩むと、走行中にホイールが外れてしまうリスクが高まります。さらに、ホイールやハブボルトが損傷してしまう可能性もあるでしょう。
安全に走行するためにも、メーカーや車種ごとに定められた規定トルクを確認したうえで、管理することが大切です。
精度の高いトルクレンチを使用する
トルク管理をするにはトルクレンチが必要不可欠です。DIYのみならず、プロもトルクレンチを使用します。
ただし、トルクレンチによって精度や強度に違いがあります。精度が悪い状態で使用すると正確に締付トルクを測定できず、締め付け不足や締め付けすぎが発生して、ボルトが破損してしまう恐れがあります。さらに、トルクレンチを誤った使用方法で常用すると、トルクレンチ自体が破損してしまう可能性もゼロではありません。
プロと同じものを用意する必要はないものの、ある程度精度の高いトルクレンチを用意したほうがいいでしょう。トルクレンチの精度の高さなどの疑問は、カー用品店や工具店に相談するといいでしょう。
なお、トルクレンチの精度を保つため、定期的な校正が必要となります。さらに、適切な環境のなかで保管することが重要です。
トルクレンチを使用したあとは、トルクの目盛りを最低値に戻して、湿度や温度の変化が少ない場所で保管しましょう。
まとめ
締付トルクは車種ごとに規定されており、必ずその値で締め付ける必要があります。規定トルクを守らないと、走行中にホイールが外れたり、車が正常に走行しなくなる危険があります。
トルク管理にはトルクレンチという特殊な工具が必要ですが、使っていくうちに精度が狂ってしまうため、定期的な校正が不可欠です。
誤ったトルク管理は重大なトラブルを引き起こす可能性があるため、タイヤ交換やトルク管理はできるだけタイヤ専門店などのプロに任せることをおすすめします。
※この記事は2025年1月現在の情報を基に作成しています。
今後変更されることもありますので、ご留意ください。