タイヤの片減りとは?原因と対策を徹底解説

タイヤの片減りは、車の安全性や維持費に大きな影響を及ぼします。そこで、本記事ではタイヤの片減りの種類や特徴に加え、片減りが起きる原因について解説します。さらに、記事の後半では片減りの防止策についても紹介するので、ぜひ参考にしてください。
目次
タイヤの片減りとは?
タイヤの片減りは、タイヤのトレッド面が均一に摩耗せず、特定の部分だけが摩耗する現象です。
片減りは車の安全性や走行性能に深刻な影響を及ぼす可能性があるため、早期の発見と対処が必要となります。
片減りの種類、特徴、原因
タイヤの片減りは、以下の4つの種類に分けられます。ここでは、それぞれの特徴や、発生原因について詳しく見ていきましょう。
- 外減り
- 内減り
- センター摩耗
- 両肩減り(ショルダー摩耗)
外減り
タイヤの外側が過度に摩耗する現象です。外減りは、ホイールアライメントのズレが主な原因です。ホイールアライメントとは、タイヤの角度や向きを調整する設定のことで、これが正しくないとタイヤに余計な力がかかり、偏った摩耗が起こります。
たとえば、ポジティブキャンバーと呼ばれる、タイヤ上部が外側に傾いている状態(V字型)では、外側に荷重がかかりやすくなるため、外減りの原因となります。
また、トーインと呼ばれる左右の前輪の先端がわずかに内側を向いている状態では、タイヤが進行方向とわずかにずれたまま走行することになり、外側が摩耗しやすくなります。
ほかにも、サスペンション(車の足まわり)の部品が劣化すると、ホイールアライメントが狂いやすくなります。アームやゴムのブッシュといった部品が傷んでくると、タイヤの取り付け角度が微妙にズレてしまい、結果として外減りが発生することがあります。
さらに、カーブを曲がるときの速度や、急なカーブを走行する頻度が多い場合も、アンダーステアとなって外減りが発生することがあります。
内減り
タイヤの内側が過度に摩耗する現象です。内減りも、ホイールアライメントのズレが主な原因です。
「ネガティブキャンバー」と呼ばれる、タイヤが内側に傾いた状態(ハの字型)になると、走行中にタイヤの内側ばかりに負荷がかかるため、内側が摩耗しやすくなります。これは車高を下げたときなどに起こりやすい傾向です。
そのほか、トーアウトと呼ばれる、タイヤの前側が外に向いているような状態のときにも内減りが発生します。
センター摩耗
タイヤの中央部分が過度に摩耗する現象で、タイヤの空気圧が高すぎることが主な原因です。
通常、車両ごとに適正空気圧が設定されていますが、適正空気圧よりも高い空気圧にするとトレッドの中央部分が過剰に膨らみ、接地面が中央に集中してしまいます。その結果、走行中に中央部分ばかりが摩耗してしまいます。
また、後輪駆動車(RWD)の場合は、駆動力と車重が後輪にかかりやすく、センター摩耗が発生しやすい場合があります。
両肩減り(ショルダー摩耗)
タイヤの両端(ショルダー部分)が過度に摩耗する現象です。ショルダー摩耗とも呼ばれます。
空気圧不足や過荷重が主な原因として挙げられます。空気圧が不足すると、タイヤが適切に膨らまず、接地面が中央ではなく左右の端に広がってしまいます。その結果、両端にばかり負荷がかかり、ショルダー部分が早く摩耗していきます。
また、荷物を多く積んで過積載の状態で走行する場合も、タイヤ全体が押しつぶされたような状態になり、同じようにショルダー部に過剰な負荷がかかるため、両肩の摩耗が進みやすくなります。
タイヤの片減りを放置するとどうなる?
タイヤの片減りを放置すると、安全性や車両の性能に深刻な影響を与える可能性があります。
たとえば、走行中の安定性が低下し、タイヤの寿命が縮まるだけでなく、車検にも通らなくなる恐れがあります。
ここでは、放置した場合のリスクとその影響について詳しく解説します。
安全性が低下する
片減りしているタイヤはグリップ力の低下を招きます。その結果、スリップしやすくなったり、ブレーキ性能が低下したりする可能性があります。
カーブを曲がるときはもちろん、直進安定性も低下してしまうため、安全性が低下します。
また、片減りはトレッドの一部分の溝が少ない状態です。雨の日の高速道路を走行するときに、車体が浮いてしまうハイドロプレーニング現象が発生しやすくなります。
さらに、一部が過度に摩耗している状態のため、放置すると最悪の場合、バーストする危険性も考えられます。
タイヤの寿命が短くなる
片減りが発生している場合、ホイールアライメントのズレが原因であることが多く、これらを改善しなければ、片減りはさらに進行します。
発生原因を特定し、早急に解決しないと、タイヤ交換の頻度が早まり、トータルの費用が増えることも考えられます。
車検に通らない
タイヤの片減りが深刻な場合、車検基準を満たさない場合があります。
車検では、整備士がタイヤの残溝や損傷度合いをチェックします。タイヤの溝に関する保安基準は、残溝が1.6mm以上であることが求められています。
しかし、片減りが発生している場合、タイヤの一部分が極端に摩耗し、残溝が1.6mm未満になることがあります。そのため、車検に通らない可能性があります。
片減りを確認する方法
では、片減りはどのように確認すればよいのでしょうか。ここでは、片減りを確認する具体的な方法を紹介します。
日常点検を習慣化させる
タイヤの片減りを発見するには、日常点検を習慣化させることも大切です。車を運転する前にタイヤを目視で確認し、片減りや損傷、異常がないかチェックしましょう。
また、定期的に自動車販売店やタイヤ専門店に点検してもらうのもおすすめです。
一部のみスリップサインが出ていないか確認する
スリップサインは、タイヤの摩耗度合いを確認するための指標で、タイヤのサイドウォール(側面)にある三角マークの延長線上に位置しています。
タイヤの残溝が1.6mmになるとスリップサインが現れるので、スリップサインが出ているかどうかでタイヤが摩耗しているかを判断できます。
外減りや内減りなどの偏摩耗そのものはスリップサインだけでは判断できませんが、一部の場所だけ著しく摩耗してスリップサインが見えていれば、片減りが進行している状態です。一部でもスリップサインが出ていると、タイヤの安全性が保てないため、タイヤの交換が必要になります。
片減りの防止対策
タイヤの片減りが発生すると安全性が損なわれて、大きな事故につながりかねません。できるだけ片減りが発生しないように日頃から注意することも大切です。ここでは、タイヤの片減りを防止するための3つの対策を紹介します。
定期的に空気圧をチェックする
タイヤの空気圧を定期的にチェックし、適正な空気圧を維持することが大切です。
車の運転席側のドア開口部などに「空気圧ラベル」が貼られており、このラベルで純正タイヤの適正空気圧を確認することができます。
実際のタイヤの空気圧をチェックし、空気圧ラベルに記載された適正空気圧に調整しましょう。
タイヤローテーションをおこなう
定期的にタイヤローテーションをおこなうことで、摩耗を均一に保ち、片減りを抑制することができます。タイヤローテーションの目安は、5,000kmごとに1回、または半年に1回です。
タイヤローテーションは、自動車ディーラーやタイヤ専門店で対応してもらえます。
タイヤローテーションについては、以下で詳しく解説しています。
アライメント調整をおこなう
ホイールアライメントが狂うと、片減りが発生しやすくなります。そのため、ホイールアライメントの調整を定期的におこなうことも、片減り防止に効果的です。
例えば、スピードが出ている状態で段差を乗り越えたり、輪留めにタイヤが強く接触したりすることで、サスペンションやタイヤ取付角度にズレが生じ、ホイールアライメントが狂うことがあります。
明らかな片減りや走行時の違和感があるときはもちろん、3年~5年に1回、または足回りの部品交換後などのタイミングで点検・調整を行うと安心です。
まとめ
タイヤの片減りは、タイヤの一部分が過度に摩耗する現象で、主にホイールアライメントのズレや、空気圧の管理不足が原因で起こります。
片減りした状態で走行を続けると、タイヤの接地バランスが崩れ、操縦安定性の低下やバーストのリスクを高めてしまうため、非常に危険です。
安全な走行を保つためにも、日頃からタイヤの状態をよく観察し、少しでも異常を感じたら、早めにタイヤ専門店などで点検・相談することが大切です。
※この記事は2025年6月現在の情報を基に作成しています。
今後変更されることもありますので、ご留意ください。