スタッドレスタイヤとノーマルタイヤの違いとは?履き替えが必要な理由を解説
スタッドレスタイヤは、雪が積もった道路や凍結した道路を安全に走行するために開発された冬用タイヤです。
スタッドレスタイヤとノーマルタイヤは、一見すると同じような外見をしていますが、ゴムの素材や構造などに違いがあります。
本記事では、スタッドレスタイヤとノーマルタイヤの主な違いやシーズンごとに履き替えが必要な理由をわかりやすく解説します。
目次
スタッドレスタイヤとノーマルタイヤの違い・見分け方
スタッドには、鋲(びょう)という意味があります。スタッドレスタイヤは、鋲がない冬用タイヤのことです。
かつての冬用タイヤは、鋲が打ち込まれたスパイクタイヤが主流でした。しかし、スパイクタイヤは、乾燥した道路を走行するとアスファルトを削って粉塵が発生するという問題点がありました。
そこで開発されたのが「スタッドレスタイヤ」です。スタッドレスタイヤは、材質や構造を工夫することで、鋲を打ち込まずとも雪道や凍結路で安定した走行が可能となっています。
スタッドレスタイヤとノーマルタイヤは「ゴムの質・硬さ」「溝の深さ・太さ」「切り込み(サイプ)の多さ」に違いがあります。両者の主な違いをみていきましょう。
ゴムの質・硬さ
スタッドレスタイヤのゴムはノーマルタイヤよりも柔らかい特徴があります。これは、凍った路面の凹凸を掴みやすくするためです。
また、低温によってタイヤのゴムが硬くなると、路面に密着しにくくなり、道路と接している面積が減って滑りやすくなります。そこで、低温によってゴムが硬くなるのを防ぐため、スタッドレスタイヤのゴムには低温時でもしなやかさを保つことができる素材が用いられています。
溝の深さ・太さ
スタッドレスタイヤには、柔らかい雪をしっかりと捉えるために、ノーマルタイヤよりも深く太い溝があります。
スタッドレスタイヤの深く太い溝にくいこんだ雪は柱状に固められ、それをタイヤが蹴り出すときの抵抗によって、駆動力や制動力を得られます。
切り込み(サイプ)の多さ
タイヤのトレッド部(地面との接地面)には、サイプというギザギザの切り込みがあります。スタッドレスタイヤのほうが、ノーマルタイヤよりもサイプが多く刻まれています。
サイプの主な役割は、路面とタイヤの間にある水分を排出することです。タイヤと道路のあいだに水の膜があると、接地面積が減ってグリップ力が低下します。また、冬場の道路においては、水の膜があると滑りを起こす可能性もあります。
そこで、水の膜を素早く取り除いて接地面積を増やし、グリップ性能を高めて滑りにくくするために、スタッドレスタイヤには多くのサイプが刻まれています。
また、雪や氷を引っ掻いてグリップ力を高める「エッジ効果」が働きやすくなることも、スタッドレスタイヤのサイプが多い理由の1つです。
スタッドレスタイヤとノーマルタイヤの見分け方
スタッドレスタイヤには、タイヤの側面に「STUDLESS」という表示があるため、ノーマルタイヤとは容易に見分けられます。
また、スタッドレスタイヤには深い溝がありサイプの数も多いため、ノーマルタイヤよりも外見がゴツゴツとしています。
冬にスタッドレスタイヤを使用する理由
冬場にスタッドレスタイヤが必要な理由は、雪道や凍結した路面でも安定して走行できるためです。
ブレーキが作動してから車が止まるまでの距離を「制動距離」といいます。雪道や凍結路においては、スタッドレスタイヤのほうがノーマルタイヤよりも制動距離が短い傾向にあるため、ブレーキを踏んだときに止まりやすいです。
また、スタッドレスタイヤはノーマルタイヤと比べて、冬場の路面でもグリップ力を発揮するように設計されているため、ハンドルを取られるリスクも抑えられます。
スタッドレスタイヤを履いていれば、冬の過酷な道路で車を制御しやすくなります。スリップによる交通事故を防ぐためにも、雪道や凍結路を走行することがあるのなら、スタッドレスタイヤに履き替えておきましょう。
雪が積もっていなくてもスタッドレスタイヤは必要
雪があまり降らない地域であっても、凍結した路面を走行するときに備えて、スタッドレスタイヤを準備しておくことをおすすめします。
アスファルトは大気よりも熱が逃げやすい性質があるため、最低気温が3℃以下になると路面温度が0℃を下回って凍結することがあります。
特に、日が当たらない道路や風通しの良い橋の上、トンネルの出入り口付近は気温が下がりやすく、路面凍結が発生しやすいです。
また、雨や雪が降った翌日の道路は、一見すると濡れているように見えて実は凍結しているケースもあります。雪道を走行する機会がなくても、スタッドレスタイヤに履き替えておくと安心です。
夏場はノーマルタイヤを使用する
スタッドレスタイヤでも乾燥した道路や濡れた路面を走行できますが、夏場ではノーマルタイヤに履き替えましょう。
乾燥した路面と濡れた路面では、スタッドレスタイヤよりもノーマルタイヤのほうが制動距離は短い傾向にあります。これは、直進中にブレーキを踏んだときだけでなく、旋回中にブレーキを踏んだときも同様です。
また、走る・曲がるといった車の基本的な運動性能も、夏場はノーマルタイヤのほうが優れています。そのため、冬はスタッドレスタイヤを、夏はノーマルタイヤを使用し、季節に合わせて適切に履き替えることが大切です。
スタッドレスタイヤとノーマルタイヤを履き替えるタイミング
では、スタッドレスタイヤとノーマルタイヤは、どのタイミングで履き替えると良いのでしょうか。スタッドレスタイヤに履き替えるタイミングと、ノーマルタイヤに戻すタイミングをそれぞれみていきましょう。
スタッドレスタイヤに履き替えるタイミング
ノーマルタイヤからスタッドレスタイヤへの履き替えは、冬が来る前に済ませておくのがおすすめです。
新品のスタッドレスタイヤの場合、スタッドレスタイヤが持つ性能を充分に発揮するために、走行速度で100〜200km程度※の距離を慣らし走行する必要があります。
※タイヤメーカーによって、慣らし走行の距離は異なります。
また、初雪が降る時季は、タイヤ販売店にスタッドレスタイヤへの履き替えを希望する人が多く来店するため、交換作業に時間がかかるかもしれません。乗っている車に適したサイズのタイヤの在庫がなく、履き替えるまで数日あるいは数週間かかるケースもあります。
雪が降るまでに慣らし走行を終えるためにも、初雪の1か月前にはスタッドレスタイヤに履き替えておくと良いでしょう。初雪の1か月前であれば、タイヤ販売店が混雑しにくく在庫も豊富である可能性が高いため、交換作業もスムーズに進みやすいです。
夏用タイヤに戻すタイミング
スタッドレスタイヤからノーマルタイヤに戻すタイミングは、雪が降り終わる頃が一般的です。
スキーやスノーボードなどのウインタースポーツを楽しむ方でも、遅くともゴールデンウィーク前にはノーマルタイヤに戻しておくと良いでしょう。
履き替えるタイミングを判断する方法
雪が降り終わる時季は、地域によって異なります。4月の下旬ごろになっても雪が降る地域もあるため、履き替えるタイミングの判断が困難なことがあります。そこで活用したいのが、気象庁の「過去の気象データ検索」です。
気象庁の過去の気象データ検索では「霜・雪・結氷の初終日の平均値」を検索できます。検索して表示される雪の終日は、過去の一定期間における雪が降り終わる日の平均を示しているため、ノーマルタイヤに履き替えるタイミングを判断するときに役立つでしょう。
また、雪の初日(初雪が降った日の平均値)を調べられるため、ノーマルタイヤからスタッドレスタイヤに履き替えるタイミングを判断する際にも活用できます。履き替えのタイミングは、雪の初日の約1か月前が目安です。
ただし、エリアによっては霜・雪・結氷の初終日の平均値が表示されません。スタッドレスタイヤとノーマルタイヤを履き替えるタイミングの判断が難しいときは、タイヤ販売店に相談すると良いでしょう。
スタッドレタイヤの寿命と買い替えのタイミング
タイヤは寿命を迎える前に買い替える必要があります。ただし適切に保管することで寿命を延ばすことも可能です。
スタッドレスタイヤやノーマルタイヤの寿命
車のタイヤには、タイヤの摩耗度合いを表す「スリップサイン」というマークが付いています。タイヤがすり減って溝の深さが残り1.6mmになると、スリップサインの高さがタイヤの表面と同じ高さになります。
スリップサインが出ているタイヤを使用することは、道路交通法で禁止されているため、すぐくに交換をしなければなりません。
タイヤの寿命について詳しくは、下記の記事をご覧ください。
タイヤを買い替えるタイミング
スタッドレスタイヤの場合、摩耗によって新品のときと比較して溝の深さが50%未満になると、グリップ性能が大きく低下するため冬用タイヤとしては使用できなくなります。
スタッドレスタイヤが50%摩耗しているかどうかは「プラットフォーム」と呼ばれる突起で判断できます。プラットフォームは、タイヤの側面にある矢印の延長線上にあるトレッド(接地面)の溝の中にあります。
プラットフォームが露出する直前が、スタッドレスタイヤを買い替えるタイミングです。
また、タイヤはゴム製品であるため、長期間にわたって使用すると次第に硬くなっていきます。ゴムが硬くなったスタッドレスタイヤは、たとえ溝が残っていたとしても路面に密着しにくくなるため、滑りやすくなってしまいます。
スタッドレスタイヤに履き替えるときは、タイヤ販売店などで事前にタイヤの硬度に問題がないかを確認しておきましょう。硬度に問題がある場合は、新しいスタッドレスタイヤに買い替える必要があります。
スタッドレスタイヤの保管方法
スタッドレスタイヤは、気温が低く暗い場所に保管しておきましょう。ゴムは、直射日光を浴びると劣化するためです。
また、ホイールを付けたまま保管をする場合、基準通りの空気圧のままだと、ゴムに負担がかかって、タイヤがひび割れたり変形したりすることがあります。そのため、空気圧を通常の2分の1程度に減らしたうえで、保管しておくことをおすすめします。
スタッドレスタイヤの保管方法については下記の記事で詳しく解説しています。
まとめ
スタッドレスタイヤとノーマルタイヤは「ゴムの質・硬さ」「溝の深さ」「切り込み(サイプ)の多さ」に違いがあります。
雪道や凍結した道路で安全に走行をするうえで、スタッドレスタイヤは欠かせません。たとえ雪が降らない地域であっても、路面は凍結する可能性があるため、スタッドレスタイヤの装着を検討しましょう。
また、スタッドレスタイヤでも乾燥した道路や濡れた道路は走行できますが、夏場はノーマルタイヤを履いたほうが車を制御しやすいです。路面の状況にあわせて、シーズンごとに適切なタイヤを装着しましょう。
※この記事は2022年11月現在の情報を基に作成しています。
今後変更されることもありますので、ご留意ください。