スタッドレスタイヤとは?サマータイヤと違い・必要な場面・寿命などを解説
雪道を走る際には、スタッドレスタイヤが必要です。しかし、サマータイヤとスタッドレスタイヤがどう違うのか気になる人もいるかもしれません。また、本当にスタッドレスタイヤを装着する必要があるのか、疑問に思う人もいるのではないでしょうか。
本記事では、スタッドレスタイヤの基礎知識として、サマータイヤとの違いやスタッドレスタイヤが必要な場面、寿命、選び方について紹介します。
目次
スタッドレスタイヤとは?
スタッドレスタイヤは、積雪道路や凍結路面で滑らずに安全に走行するために開発された冬用タイヤです。「スタッド」は鋲(びょう)という意味であり、スタッドがレス(無い)というのが語源で、鋲がないタイヤを意味しています。
もともと、雪道などの悪路を走行する際には、鋲が付いたスパイクタイヤが使用されていました。しかし、スパイクタイヤは悪路での走行性能は高いものの、路面を傷つけたり、スパイクと路面との摩擦で粉じんが発生したりするという問題がありました。そのため、鋲がないスタッドレスタイヤが主流となったのです。
なお、日本では「スパイクタイヤ粉じんの発生の防止に関する法律」が1990年に公布され、1991年4月1日より施行されてスパイクタイヤの使用が原則禁止となりました。
スタッドレスタイヤとサマータイヤの違い
スタッドレスタイヤは、寒冷地や積雪道路、凍結路面での走行を想定して設計されており、サマータイヤと比べて柔らかいゴムが使用されています。この柔らかいゴムにより、低温でも硬化しにくく、路面にしっかりと食いつくことが可能です。また、スタッドレスタイヤのトレッド面には、サマータイヤよりも多くのサイプ(細かい切れ込み)があり、これが路面の雪や氷を引っ掻いてグリップ力を向上させます。
一方、サマータイヤはスタッドレスタイヤよりも硬めのゴムが使われており、高温でも熱だれしにくい設計がされています。これにより、気温が高い日でも高いグリップ力を発揮します。サマータイヤにもサイプがありますが、これは雨天時の排水性を高めるために設けられています。
このように、スタッドレスタイヤとサマータイヤは、ゴムの素材やトレッド面に大きな違いがあり、それぞれのタイヤは走行する路面環境に応じて最適化されているのです。
こちらの記事でも詳しく解説しています。
スタッドレスタイヤとノーマルタイヤの違いとは?履き替えが必要な理由を解説
スタッドレスタイヤが必要な場面は?
スタッドレスタイヤは、冬の過酷な道路状況で安全に走行するために欠かせない装備です。
ここでは、スタッドレスタイヤが必要な場面について、「雪道」「凍結路面」「気温が低いとき」の3つにわけて解説します。
雪道
サマータイヤを装着して雪道を走ると、雪をうまく引っ掻けず、タイヤが空転して正常に走行することができません。しかし、柔らかいゴムで作られ、細かい切り込み(サイプ)が施されているスタッドレスタイヤであれば、雪が積もった路面でもしっかりと地面に食いつき、安定した走行が可能です。
さらに、スタッドレスタイヤは加速時や減速時でも滑りにくく、カーブを曲がる際にも安定して操縦できます。
スタッドレスタイヤは、雪上性能に優れており、雪道での安定した走行を実現します。種類によって性能の差はあるものの、すべてのスタッドレスタイヤに共通しているのは、「柔らかいゴム」「細かなサイプ」「深い溝」の3つの要素です。これらの要素があることで、雪道でも安全な走行ができます。
凍結路面
凍結路面を走行するときもスタッドレスタイヤが必要です。凍結路面は雪道よりもさらに滑りやすく、サマータイヤでは走行や停止が困難です。サマータイヤではスリップや空転が発生し、安全に走行できません。そのため、凍結路面を走る機会がある場合は、スタッドレスタイヤに交換することが重要です。
スタッドレスタイヤは、柔らかいゴムと細かなサイプが施されているので、氷をしっかりと引っ掻き、雪道と同様に凍った路面でも安定した走行が可能となります。
気温が低いとき
最低気温が3℃以下になると、路面温度が氷点下に達し、路面が凍結する可能性があります。路面が凍結していなければ、サマータイヤでも走行は可能です。しかし、気温が低いとサマータイヤのゴムが硬化し、本来の性能を発揮できないため、グリップ力が低下し、安全に走行できない場合があります。
特に「ブラックアイスバーン」には十分な警戒が必要です。ブラックアイスバーンとは、一見濡れているように見えるものの、実際には路面が凍結している状態のことを指します。見た目では凍結しているかどうかが判断しづらく、雨に濡れた路面と同じように見えますが、実際には非常に滑りやすく危険です。
サマータイヤのままだと、ブラックアイスバーンでスリップしてしまう恐れがあり、重大な事故につながる可能性があります。そのため気温が低い時期は、雨や雪が降っていなくても、路面が凍結していることやブラックアイスバーンが発生している可能性を意識し、スタッドレスタイヤに交換して安全に運転することが重要です。
スタッドレスタイヤの寿命の見分け方
スタッドレスタイヤもサマータイヤ同様に寿命があり、寿命を過ぎて使用すると本来の性能を発揮できず、スリップしたりパンクしたりするリスクが高まります。
では、どのようにスタッドレスタイヤの寿命を判断すればいいのでしょうか。ここでは、スタッドレスタイヤの寿命の見分け方について、詳しく解説します。
タイヤの劣化状態
スタッドレスタイヤの寿命は、タイヤの劣化状態から判断できます。たとえば、タイヤのサイドウォール(側面)にひび割れやキズが見られる場合は、劣化のサインです。また、タイヤの一部分が極端に摩耗している「偏摩耗」も、タイヤが劣化している状態といえます。
タイヤの溝が十分に残っているように見えても、ひび割れや偏摩耗が発生している場合は、タイヤの性能が低下している可能性があります。そのため、タイヤ専門店で点検してもらい、交換が必要かどうかを確認することをおすすめします。
プラットホームの露出
スタッドレスタイヤのプラットホームが露出したら、寿命を迎えたと判断できます。プラットホームは、スタッドレスタイヤが新品の状態から約50%摩耗した時点で露出します。これは、サマータイヤのスリップサインに相当し、タイヤの使用限度を示すもので、これ以上の使用は危険であることを意味しています。
プラットホームが露出した状態で走行すると、スタッドレスタイヤを装着していても雪道や凍結路面でのグリップ力が大幅に低下し、スリップのリスクが高まります。また、パンクやバーストを引き起こす可能性もあるため、プラットホームが露出したら交換が必要です。
タイヤの使用年数
タイヤのキズやひび割れがなかったり、プラットホームが露出していなかったりしても、スタッドレスタイヤの寿命が来ている可能性があります。たとえば、新品タイヤを装着してからの使用年数を確認してみましょう。
新品のスタッドレスタイヤを装着してから5年以上経過すると、経年によってタイヤに含まれる油が揮発(きはつ)*し、柔軟性が失われていきます。スタッドレスタイヤは、雪や氷を引っ掻いて安全に走行できるよう柔らかく作られていますが、柔軟性が失われると、路面をしっかりと捉えることができなくなり、グリップ力が低下してスリップのリスクが高まります。
そのため、新品のスタッドレスタイヤを装着してから、5年ほど経過したタイミングでタイヤ専門店に点検してもらい、継続して使用できるかどうか判断してもらいましょう。
*液体が気体となること
スタッドレスタイヤの寿命については以下で詳しく解説しています。
スタッドレスタイヤの寿命年数は?寿命の判断方法と正しい保管方法
スタッドレスタイヤの選び方
ひとえにスタッドレスタイヤといっても、さまざまなメーカーや銘柄があり、どれを選べばいいかわからない人も多いでしょう。
ここでは、スタッドレスタイヤの選び方について、「雪上性能」「氷上性能」「性能持続性」の3つにわけて詳しく紹介します。
雪上性能
スタッドレスタイヤを選ぶ際に「雪上性能」が重要とされる理由の1つは、雪道での安全性に直結するためです。
サマータイヤでは、積雪した路面を安全に走行することは難しく、滑りやすくなります。しかし、スタッドレスタイヤであれば、雪道でも安定した走行が可能です。
スタッドレスタイヤの中でも雪上性能には銘柄により差があり、雪上性能が高いほど、雪道での安定性が向上します。特に、加速やブレーキ、カーブといった基本的な動作において、その性能差が表れやすいです。そのため、雪道を走行する機会が多い人は、できるだけ雪上性能の高いスタッドレスタイヤを選ぶことをおすすめします。
氷上性能
スタッドレスタイヤを選ぶ際には、雪上性能に加えて氷上性能もチェックしましょう。氷上性能とは、凍結した路面での走行性能を示すもので、特に気温が低いエリアでは欠かせない要素です。
気温が低いエリアでは、路面が凍結してスリップしやすくなります。氷上性能が高いスタッドレスタイヤであれば、しっかりと路面を捉えて、安定した走行が可能になります。
優れた氷上性能を持つスタッドレスタイヤを装着すると、タイヤと路面との間にできた水膜をしっかりと除去してくれます。タイヤが路面に密着することから、凍った路面でもグリップ力が落ちずに安心して運転できます。
性能持続性
雪道や凍結路面での性能に加え、スタッドレスタイヤの性能がどれだけ持続するかも重要なチェックポイントです。スタッドレスタイヤの性能持続性が高いと、長期間にわたって本来の性能を維持でき、結果として交換頻度を減らせるため経済的メリットを受けられます。
スタッドレスタイヤの場合、もともと柔らかく作られていますが、経年によってゴムが硬化して本来の性能を発揮できなくなります。しかし、性能持続性が高いスタッドレスタイヤであれば、通常よりも硬化するまでに時間がかかるので、結果的に長期にわたってスタッドレスタイヤを使用することが可能です。
耐摩耗性
摩耗への耐久性を表す「耐摩耗性」も確認しておきましょう。耐摩耗性が高いほど、タイヤが摩耗しにくくなるので、長期的に使用できるようになります。スタッドレスタイヤを少しでも長持ちさせたい方は、性能持続性や耐摩耗性が高いタイヤを選びましょう。
スタッドレスタイヤはどこで購入する?
スタッドレスタイヤの選び方は理解できたものの、どこで購入すればいいかわからないという人もいるかもしれません。
結論、スタッドレスタイヤはディーラー以外にも、カー用品店、ガソリンスタンド、タイヤ専門店などで購入および交換が可能です。
- ディーラー: 純正タイヤと同じサイズのスタッドレスタイヤに交換してもらえるのが利点です。また、タイヤ交換と併せて、他の部品やパーツの点検も依頼できるため、総合的なメンテナンスが可能です。
- カー用品店: さまざまな銘柄のスタッドレスタイヤを取り扱っており、予算やニーズに応じて選ぶことができます。さらに、ドライブレコーダーやETC、カーナビなどの関連商品も取り扱っており、タイヤと同時にこれらのアイテムの交換や取り付けができるのが特徴です。
- ガソリンスタンド: スタッドレスタイヤの交換も行っていますが、タイヤ交換を専門にしているわけではないため、希望のメーカーやサイズの在庫がない場合があります。ガソリンスタンドで交換を希望する場合は、事前に在庫や取り扱いについて確認することをおすすめします。
- タイヤ専門店: 専門的な知識を持つスタッフが、用途や予算に応じて最適なスタッドレスタイヤを提案してくれるのが強みです。また、ホイールも取り扱っているため、タイヤとホイールを同時に交換することも可能です。タイヤ選びに迷っている方には、効率的にアドバイスを受けられる場所です。
このように、購入場所によってサービスや選択肢が異なるため、ニーズに合った場所でスタッドレスタイヤを購入・交換することができます。
スタッドレスタイヤに関するよくある質問
ここでは、スタッドレスタイヤに関するよくある質問を紹介します。
スタッドレスタイヤはいつ履き替えるの?
スタッドレスタイヤに履き替えるタイミングは、気象庁が発表している「霜・雪・結氷の初日」の1ヶ月前を目安にするといいでしょう。スタッドレスタイヤは、雪道や凍結した路面を安全に走行するためには不可欠です。
しかし、実際に雪が降ったり路面が凍結したりしてから交換するのでは遅く、事故のリスクが高まります。そのため、雪が降り始める1ヶ月前を目安にスタッドレスタイヤに交換するのがおすすめです。
もちろん、住んでいる地域によって雪が降り始める時期は異なるため、気象庁が発表する「霜・雪・結氷の初日」を確認し、正確なタイミングでの交換を心がけましょう。
1ヶ月前にタイヤ交換を済ませておけば、突然の雪や路面の凍結に対しても安全に備えることができます。
履き替え時期や時間の目安についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
スタッドレスタイヤの交換時期はいつ?履き替え費用・時間の目安
スタッドレスタイヤで車検に出してもいい?
スタッドレスタイヤを装着したまま車検に出しても問題はありません。車検時のタイヤの検査項目では、「溝の深さ」「損傷」「サイズ」を確認しているので、スタッドレスタイヤかサマータイヤかどうかは関係ありません。
そのため、スタッドレスタイヤを装着している場合でも、車検のためにわざわざサマータイヤに戻す必要がないのです。
ただし、車検に問題がないからといって、夏場にスタッドレスタイヤを装着したままにしておくのは危険です。スタッドレスタイヤは、雪道や低温時の使用を想定して柔らかいゴムで設計されています。夏場の高温では、柔らかいスタッドレスタイヤが走行中に変形しやすくなり、バーストのリスクが高まります。そのため、夏場は必ずサマータイヤに交換して、安全な走行を心がけましょう。
詳しくは以下で解説しています。
スタッドレスタイヤを付けたままで車検に通るのか?夏場でも可能!? | タイヤコラム
スタッドレスタイヤで高速道路は走行できますか?
スタッドレスタイヤを装着したまま高速道路を走行することは可能です。しかし、天候状態や路面状態によって、規制がかかるケースがあります。
たとえば、「冬用タイヤ規制」が発令された場合、スタッドレスタイヤやタイヤチェーンを付けていれば高速道路を走行できます。「冬用タイヤ規制」が出ているときは、高速道路の入口などでタイヤの確認が行われ、スタッドレスタイヤを装着していなかったり、チェーンをつけていないサマータイヤを履いていたりする場合は、高速道路への進入が制限されます。
一方で「チェーン規制」が発令された場合は、タイヤチェーンを装着する必要があります。大雪などでチェーン規制がかかることがあり、その際はスタッドレスタイヤだけでは安全に走行できないと判断されるため、タイヤチェーンを装着していない車両は高速道路を走行できません。
また、路面状態や天候に関わらず、「通行止め」が発令されている場合は、どのようなタイヤを装着していても高速道路を走行することはできません。通行止めがかかっている間は、たとえタイヤチェーンを装着していても、高速道路の利用はできず、一般道を利用するしかありません。
冬の高速道路についてはこちらで詳しく解説しています。
スタッドレスタイヤで高速道路の走行は可能?規制の種類や注意点を解説
まとめ
スタッドレスタイヤは、雪道や凍結路面などの冬季特有の過酷な環境で安全に走行するために開発されたタイヤです。通常のサマータイヤでは低温や積雪、凍結した路面で十分なグリップ力を発揮できず、スリップのリスクが高まります。そのため、冬季にはスタッドレスタイヤへの交換が必要です。
スタッドレスタイヤを選ぶ際には、「雪上性能」や「氷上性能」だけでなく、「性能持続性」や「耐摩耗性」にも注目すると、長期的に安全な走行を確保できます。また、タイヤのプラットホームが露出していたり、サイドウォールにひび割れや損傷が見られたりした場合は、速やかに新しいタイヤへ交換しましょう。
スタッドレスタイヤにはさまざまなメーカーや銘柄があり、選び方に迷うこともありますが、タイヤ専門店に相談すれば、自分の車や走行環境に合った最適なタイヤを選ぶことができます。
※この記事は2024年10月現在の情報を基に作成しています。
今後変更されることもありますので、ご留意ください。