タイヤにひび割れ!これって大丈夫?タイヤのひび割れ予防と対策法
パンクのように見た目でわかる損傷は、修理や交換が必要だと気が付きやすいですが、ひび割れは目立つ大きさでないとなかなか気づきにくいでしょう。
しかし、ひび割れを見過ごしてしまうとバースト(破裂)を起こしてしまう可能性があります。
では、タイヤのひび割れはどのように見つけたらよいのでしょうか。
本記事では、タイヤのひび割れができる場所や原因をはじめ、対処法を解説します。
目次
タイヤのひび割れができる場所
タイヤのひび割れが確認できる場所として、側面になる「サイドウォール」と地面との接地面である「トレッド面」の2か所が考えられます。
サイドウォール
タイヤの側面であるサイドウォール部は地面とは接触しない部分であるため、段差に乗り上げるなどしないかぎり損傷することはあまりありません。
しかし長年使用し続けたタイヤのサイドウォール部には「クラック」と言われる経年劣化によるひび割れが発生し、徐々にそのひび割れは大きくなっていきます。
トレッド面
地面との接触面であるトレッド面は、タイヤが磨り減っていく部分なので、小さな傷や亀裂ができやすい場所です。
トレッド面でも地面と接触していない溝の部分に、小さなひび割れが見えることがあります。これもサイドウォール部に見られるひび割れです。
どのくらいのひび割れだと危険?ひび割れのレベル
ひび割れは、小さなシワのようなものから、割れ目がハッキリしているものまでさまざまな段階があります。
そこで「一般社団法人 日本自動車タイヤ協会」の画像を元に、タイヤのひび割れの進行度を見てみましょう。なお、各進行度合いの内容については編集部の見解です。
小さなひび割れは経年劣化の範囲内
タイヤにできるひび割れは空気圧不足や油性タイヤワックスの塗りすぎなどさまざまですが、小さなひび割れは経年劣化によるものがほとんどです。
経年劣化のひび割れを避けることは難しいですが、ひび割れがタイヤ内部のコードに達していなければ、各タイヤメーカーは継続使用可能としています。そのため、画像のレベル1.2相当であれば問題ありません。
深いひび割れは点検が必要
はじめは小さなひび割れも時間が経てば徐々に広がっていき、画像のレベル3、4の段階になると継続して使用できるものの、日常的な点検が必要になります。
ひび割れがタイヤコードに達していると交換が必要
ひび割れが進行すると最終的には内部のタイヤコードまで達し、走行中のバースト事故につながるリスクが高まります。そのため、ひび割れがタイヤコードに達しているときは交換が必要です。
タイヤコードはタイヤの形を保つための骨格に相当します。通常は厚みのあるゴムの弾力によって保護されています。それが、ひび割れによってタイヤコードが露出すると、本来触れるはずのない空気や雨水に晒されることになるので、それによりタイヤコードが劣化して強度が下がり、最終的にはバーストなどに繋がります。
画像のレベル5相当になると、要注意となるのでタイヤの販売店に相談しましょう。
タイヤがひび割れする原因
タイヤがひび割れる原因として主に以下の5つの要素があります。
- 紫外線
- オゾン
- 空気圧不足
- タイヤワックス
- 走行距離不足
それぞれを詳しく見ていきましょう。
原因その1.紫外線
紫外線によるタイヤの日焼けによってゴムの性質が硬化・変質し、ひび割れに繋がります。紫外線が強くなる3月頃から、日差しが強い夏の時期にかけて劣化が進行しやすいため、露天駐車しているタイヤほど影響が大きいと言えるでしょう。
原因その2.オゾン
オゾン(O3)も劣化の原因になります。
オゾンは酸素原子が3つ結合したもので、酸素よりも酸化作用が強くなっており、殺菌や消毒目的で使われることがある気体です。オゾンを発生させる原因や方法としては主に2種類あります。
1つ目は紫外線によるもので、空気中の酸素を解離させて2個の酸素原子を作り(O2→O+O)、これが傍にある酸素と結合してオゾンとなります。ただし紫外線によって生成されるオゾンの量はほぼ一定なので、高濃度化することはありません。
2つ目は放電現象によるもので、自然界では落雷によってオゾンが発生します。人工的に放電現象を発生させてしまう物としてはモーターが該当します。
たとえばエアコンの室外機もモーターで駆動しており、室外機周辺はオゾン濃度が高くなりやすいです。加えて夏場はオゾンと共に熱風を吹き出すため、室外機の傍にあるタイヤは劣化が早まります。
原因その3.空気圧不足
空気圧が不足したタイヤは変形しやすくなり、通常よりも発熱しやすくなります。また変形することで地面との接地面も大きくなり、摩擦抵抗が増加することで燃費などの走行性能にも影響を与えるだけでなく、ひび割れにも繋がります。
過積載も空気圧不足と同様の影響を与えます。タイヤの適正空気圧はタイヤの変形量を考慮した車両の総重量によって決まるものなので、積載時にはより高い空気圧が必要です。これはトラックなどでは特に顕著で、空荷状態と積載時重量では適正空気圧が大きく異なっています。
原因その4.タイヤワックス
ゴム製品であるタイヤは、内部に油分を多く含んでいます。その油分が抜ける、あるいは変質してしまうこともタイヤの劣化につながります。そのためアルコールなどの有機溶剤、石油など揮発油の付着を避けましょう。
また、洗車や艶出しのための油性タイヤワックスが、タイヤの油分を奪い劣化の原因となる場合があります。カーシャンプーに含まれる界面活性剤は、油分を分解して洗い流し油性タイヤワックスに含まれる油分とタイヤの油分は結合しやすく、結合した油分はタイヤから流出しやすくなります。タイヤを洗う際にはカーシャンプーは使わず、使用するタイヤワックスは水性のもにするとよいでしょう。
一方、タイヤが茶色く汚れて見えることがありますが、これは劣化防止剤の保護膜によるものなのでタイヤの性能に問題はありません。
原因その5.走行距離不足
タイヤのゴムには劣化防止剤が添加されており、これによって経年劣化による性能低下を遅らせています。
しかし、この劣化防止剤は走行時の熱と遠心力で染み出す仕組みとなっています。想定された使用環境下で走行していれば表面まで浸透しますが、走行距離が少ないと表面まで劣化防止剤が行き渡りません。
その結果、摩耗することが少ないサイドウォール部表面にひび割れが発生してしまいます。
ひび割れを予防する方法
ひび割れさまざまな原因がありますが、多くは経年劣化によって起きる現象なので、完全に防ぐことは難しいです。ただその原因がわかれば、その経年劣化の進行を遅らせる対策方法はあります。ここではひび割れを予防する方法を見ていきましょう。
保管する際の扱いに気をつける
タイヤを車両から外して長期間保管される場合には、保管場所にも気を付けなくてはいけません。
紫外線を含む日光を浴びる場所、オゾンと熱風を発生させるエアコン室外機周辺、有機溶剤や揮発油の傍などはタイヤを劣化させる要素があるため、避けるべき場所です。
タイヤの保管は室内の冷暗所が適しているため、ガレージや倉庫がよいでしょう。室内保管が難しい場合には、タイヤカバーをかけて保管しておくのがおすすめです。
タイヤの保管についてはこちらで詳しく解説しています。
日陰のある場所に駐車する
車に装着されているタイヤも冷暗所になる場所での保管が適しています。ガレージやカーポートなど屋根の下に駐車するだけでも、紫外線の影響は小さくなります。
また屋根を構築できない駐車スペースの場合は、タイヤまで覆い隠すことができるボディカバーを使う事で、タイヤだけでなく塗装面なども保護できるようになります。
小まめに空気圧を調整する
走行にともなう劣化を防ぐ方法として有効なのが空気圧の調整です。タイヤの空気圧は、熱でタイヤ内の空気が膨張していない冷えた状態で確認する必要があるので、走行前点検として月に1回程度おこないましょう。
先に述べた通り、空気圧不足のタイヤは変形しやすくなり、適正空気圧よりも発熱しやすいです。さらにタイヤのショルダー部の摩耗が増える「両肩べり」の偏摩耗を引き起こすことで、タイヤの寿命が短くなります。
また空気圧不足は、タイヤへのひび割れによる劣化を進行させるだけではありません。摩擦抵抗増加による燃費の悪化、高速走行でのスタンディングウェーブ現象によるバースト事故、ハイドロプレーニング現象によるスリップ事故などのリスクもあります。タイヤ本来の性能を発揮し続けるためには、定期的な空気圧調整が必要です。
まとめ
タイヤのひび割れは、経年劣化を含めたさまざまな原因で起きるため、使い続ける限りいずれは発生し、その後大きくなっていきます。ですがタイヤを劣化させる原因を理解し、対策を講じることで劣化の進行度を抑えることができます。
紫外線やオゾンの影響が少ない、冷暗所にてタイヤを保管するよう心がけましょう。タイヤカバーをかけるだけでも、太陽光線からの影響は少なくなります。
また、空気圧調整は経済的な出費も少なく、燃費向上が期待できるため、ランニングコストを下げられるでしょう。タイヤの状態をチェックする機会にもなるので、定期的なメンテナンスの一環として取り入れることをおすすめします。