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ホイール

ホイールの種類を決める4要素とは?それぞれに見られる特徴を解説

2023.07.31

自動車に装着されるタイヤホイールにはさまざまな種類があり、その性能にも違いがあります。

ホイールは軽量かつ車両の走行負荷に耐えられる強度が求められますが、軽さや強度は素材や製法によって左右されます。一方でホイールは車両の足回りの印象を変えるパーツでもあり、デザインや構造にもこだわりたいところです。

本記事ではホイールの素材、デザイン、製法、構造の4つの要素からみた、ホイールの違いを解説します。

ホイールの材質

Alloy car racks, equipment rack at car repair service

ホイールは車両の重量を支え、走行中の負荷にも耐えられる強度が必要です。またホイールはサスペンションよりも下に取り付けられる物で、バネ下に懸架されていることになります。一般的にバネ下の重量が軽いほど運動性能や応答性が良くなる傾向にあり、車体の軽量化よりも効果が高いです。

特にホイールは回転運動する関係上、軽量であるほど慣性力が小さくなり、加速しやすく止まりやすくなります。軽量化による運動性能への寄与度が高いため、可能な限り軽量化が可能な素材が求められるのです。

スチール(鋼)

スチール製のホイールは、プレス機による打ち抜きによって大量生産が可能です。価格が安価で、多くの車に標準装備として採用されています。

複雑なデザインが作れないため、ホイールそのものはディッシュタイプもしくはスポークタイプが多いです。またホイールキャップを使って見た目を変える場合もあります。

材質としてはアルミよりも重たいのですが、剛性が高くて粘り強い材質なので、欠けや割れに対しては強いと言えます。

アルミ

スチールよりも軽量であり、製造過程においても加工もしやすく、デザイン性も高いタイプです。素材としての熱伝導率の高さや、放熱性に優れたデザインを採用しやすく、ドレスアップ目的からスポーツ走行用まで幅広く採用されています。熱伝導率の高さや放熱性が優れることで、摩擦熱によって加熱するブレーキの冷却を促し、制動力の維持、フェード現象およびベーパーロック現象の発生率低下につながります。

製造法としては溶けたアルミを型に流し込む鋳造と、圧力を加えて成形する鍛造の2種類があります。製造方法の詳細は後で解説します。

カーボン

炭素繊維(カーボンファイバー)をシート状にしたものを積層・成形して製造されるホイールです。アルミ以上に軽量ですが、製造コストが高く、主にハイパフォーマンスが要求される競技シーンでの採用例が多いです。

マグネシウム

カーボン同様にアルミよりも軽量な素材として、ハイパフォーマンスが求められる競技シーンや、一部のスーパーカーなどでの採用例があります

ただし耐腐食性、防錆性、耐衝撃性に乏しく、なおかつマグネシウム自体が比較的燃えやすい金属ということもあり、取扱いには注意が必要です。

ホイールのデザイン

Black car on the road. 3D render and illustration.

車軸と繋がるディスク部は、デザインによって車両全体の印象を大きく変えます。特に近年ではアルミホイールの採用が珍しくなく、アルミホイールのデザイン性の高さもあって、派生型も含めてさまざまなデザインのホイールが見られます。

ここではホイールのデザインを見ていきましょう。

スポーク

中央から支柱=スポークが伸びているタイプです。アルミホイールではオーソドックスなデザインでもあり、スポーティーさが特徴です。

メッシュ

スポークを細くし、網目状(メッシュ)に配列されたタイプです。後述のワイヤースポークタイプからの発展形で、スポークが交差するポイントがあるのが特徴です。また交差させるポイントや角度も異なり、さまざまなデザインがあります。

フィン

多数の細いスポークによって構成されているタイプです。スポークタイプの派生型になり、スポークタイプが5~10本程度で構成されるのに対して、より多くのスポークで構成されるものをフィンタイプとして区別しています

ワイヤースポークタイプ

メッシュタイプの原型ともなるデザインで、自転車のホイール同様に金属ワイヤーの張力によってホイールの形を保っています

ホイールそのものにサスペンションとしての役割があるため、クラシックカーでは重宝されていました。一方で定期的な張り調整が必要など手間がかかることから需要が減り、現在では製造するメーカーも少なくなっています。

ディッシュ

ディスク部がディッシュ(皿状)に見えるタイプです。スチールホイールでは凹凸と肉抜き穴のある一般的なデザインですが、アルミホイールではより平面度の高いデザインもあり、大きな面積を持つのが特徴です。

一方で大きな面積を持つことで重量が増加しやすく、またブレーキも覆い隠してしまうため、ブレーキで発生した熱が籠りやすい傾向にあります。

スパイラル

螺旋や渦巻のように見えるタイプです。スポークを湾曲させたものや、ホイールの中心から外れるような角度を付けられたデザインとなっており、フィンやメッシュの派生型として見られることが多いです。

ホイールの製造方法

Electric wheel CNC grinding on steel structure produces colorful sparks

現在では一般化したアルミホイールですが、そのアルミホイールの性能を左右するのが製造方法です。大きく分けて鋳造と鍛造の2つがあります。

鋳造

ホイールの型に溶けたアルミニウムを流し込んで成形する手法です。決まった型さえあれば大量生産もでき、型を変える事でデザイン性の高い製品も作ることが可能です。製造コストも高くないため、アルミホイールとしては比較的安価なものとなります。

鋳造法にもいくつか種類があり、重力に任せて溶けたアルミ=溶湯(ようとう)を流し込む「重力鋳造法」は他の金属でも見られるもので、金属パーツを作る上では基本的な手法です。

ただし、この重力鋳造法ではアルミの分子が下方に偏りやすく、気泡などによってパーツ全体での均一性を保つのが困難です。そこである程度圧力を加えつつ型に流し込む方法として、低圧ガスを使う「低圧鋳造法」や、圧をかけて溶湯を型に注入する「ダイカスト法」などがあります

また凝固していく過程で圧力を加える「スクイズキャスティング」というのもあり、鋳造と鍛造を組み合わせた手法です。型に流し込むまでは鋳造工程ですが、冷えて固まる過程で高圧を加えて鍛造をおこなうため、従来の鋳造よりも強度や軽量化に優れています。

金型鍛造

熱せられたアルミニウムをプレス機によって圧縮成型する手法です。金型にてある程度の形に成形した後、切削加工を行い余分な個所を削り取ります。高い圧力が加えられるためアルミの粒子が高密度化され、鋳造に比べて高い強度と軽量化が可能です。

一方で金型で成形できる形状にも限度があるため、デザイン性の高い物を作るには不向きです。また製造に必要なプレス機と金型が高価であるため、販売価格も鋳造アルミホイールに比べて価格が高くなります。

金型を使う鍛造法として一般的なのが「熱間鍛造法」で、アルミが個体として形を保てる400~500℃に加熱しながら高圧プレスをかけて圧縮と成型を繰り返します。

「半溶融鍛造法」では熱せられて個体と液体が混じった柔らかい状態になったアルミを使用し、金型にて圧縮成形されます。

鍛造削り出し

あらかじめアルミニウムの塊を鍛造加工し、切削加工マシンにてホイールの形に削り出しをおこなう手法です。切削加工マシンによって成形をおこなうため、金型鍛造では難しいデザインにもできます。

金型鍛造に比べると削り出しによるアルミ材のロスは多いものの、高価なプレス機と金型の導入は不要です。切削加工マシンはさまざまなデザイン変更にも柔軟に対応できるため、金型鍛造のアルミホイールに比べて安価で、新規参入したメーカーが取り入れやすい製造法と言えます。

ホイールの構造

Car Wheel. Concept design. 3D render.

ホイールはディスク部とリム部で構成されていますが、より高い剛性を求める場合やデザイン性の追求など、求められる要素によって構造が変えられています。

1ピース

タイヤをはめるリム部と、スポークなどのディスク部の全てが一体で成形となっているタイプです。モノブロック構造と呼ばれることもあり、1つの部材から作られているため強度が高いです

一方でリムとディスクのインセット変更ができないため、デザインの自由度は低いと言えます。

2ピース

リムとディスクを分割したタイプです。オーダーメイドでリムに対してディスクの位置=インセットを変更することが可能で、ディスクがリムの中に入り込んだ深リム仕様にできます。ディスク部が分離されたことで、加工がしやすくデザイン性の高い製品が作れます

3ピース

ディスクとの分離に加えて、リム部もアウターとインナーに分割して計3パーツで構成されるタイプ。

2ピース同様に接合部の剛性不足による重量増加がしやすい傾向にありますが、各パーツの素材や製法を変えることで機能性やデザイン性の向上に繋がっています。ホイールとしては最高級品として扱われ価格も高価です。

まとめ

Rims of a race car at the track

自動車の進化と同時に、装着されるホイールも進化を続けています。

従来のスチール製ホイールもありますが、現在ではより軽量なアルミを採用するのが一般的です。ハイパフォーマンスが要求されるシーンではマグネシウム、カーボンなども採用されるようになりました。

またアルミホイールも新しい製造法が考案されており、鍛造ならではの強度と軽量化を実現しながら鋳造のような自由なデザインが実現可能です。

構造も製造法や素材の見直しによって、デメリットとなっていた要素が小さくなり、選択の幅が広がるようになりました。

今後は新しい製造法による量産化の流れも加速し、今以上に高機能高品質のホイールが流通しやすくなると予想されます。

※この記事は2022年1月現在の情報を基に作成しています。
今後変更されることもあるので、ご留意ください。